2008/07/29

少しずつ読みました

『トリエステの坂道』に続き、須賀敦子氏の本はこれが2冊目になります。『トリエステの坂道』の感想を本blogにupしているのが今年の1月29日とありますから、前作を読んでから本作品までの間が随分と長かったことになります。

今回の『時のかけらたち』も、前回読んだ『トリエステの坂道』同様、須賀敦子氏が過去に経験されたことを回想する中、現時点での感想も加えつつ綴られた一冊となっていました。その中には須賀敦子氏のご専門である、イタリア文学についての記述も少なくなく、全くの素人の私には大層難しい箇所も多々ありました。そういうわけで、読み進める速度は”少しずつ”となったのです。難解な部分はそれはそれとして、新しい世界の氷山の一角を覗き見た経験として私の中には残りました。それ以上に全体を通して、非常に普遍性の高い内容だったのではないかと、そんな風に私は感じました。

私は時に「あの時、こうだったなぁ…」とか、何かのきっかけで「そう言えば、あの時、こんなことがあったなぁ…」などと思い出すことがあります。そして、回想をしている時に幸運であれば、その当時わかりえなかった事柄や、当時の状況に対しての新しい理解や見方を得ることが出来ます。「ストンと落ちる」とでも言うのでしょうか。時を越えて学ぶことは本当に多いと感じさせられ、又、貴重であると思います。”人生において無駄なことは無い”ということをよく耳にしますが、まさにこのことではないか、と思ったりします。しかし一方で過去に執着し、嘗ての自身の言動を正当化する為に現在の時間を費やしているのではないか、そういった消極的な意味合いでこの行為を捕らえることも少なくありません。しかし今回、この本を読んで、決して私だけが上記の様な思考をしているわけでないことを知ったと同時に、過去に縛られているのではないか…という罪悪感からも解き放たれた気がしました。

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