2008/08/25

間宮兄弟

『間宮兄弟』、江國香織さんの本のタイトルです。

江國香織さんの本をここ1年程で随分読んだつもりでいましたから、殆ど読んだかな…と思っていたのですが、まだまだ未読の物がありそうです。嬉しい限り。

さて、この『間宮兄弟』、同居している兄と弟の物語。兄弟のぞれぞれの私生活に登場する女性、その女性に関係する人たち、それぞれの人物の視点が入れ替わり立ち代りしながら物語が進んで行きました。”女性”と書きましたが、この物語に登場する女性は、兄弟にとっては知人以上、友達未満といった関係。兄弟揃ってお付き合いの願望はあるものの経験はなく、憧れつつも自信がなく…といった状態を抱えています。要するにパッとしない兄弟なのです。しかし、とても良い人柄の持ち主で、又、興味深い2人でもあります。

ある年の夏、そんな兄弟に2人の女性が関わってくるようになります。兄弟は喜んで、自宅に招いてお食事会をしたり、花火大会をします。そして女性が自宅来ることの華やかさや、自分達が上手に女性と接していることに満足します。一方、女性陣は誘われたから行ったものの、友達以上の関係は全くもって求めません。逆に『間宮兄弟』の生活スタイルを観て、自身の人生を振り返るきっかけを掴み、新しい一歩を踏み出していくのです。そうして最後には『間宮兄弟』からは離れていくのでした。

このように『間宮兄弟』の華やかだった一夏は終焉を向かえ、兄弟はまたしても自信を失い、「やっぱり兄弟2人で暮らすのが良い」という思いに行き着くのです。ある人の人生の一時期を駆け抜ける人々を描いた物語、駆け抜ける人、駆け抜けられた人、それぞれに自分と言う物を見つけているのかな…などと思いながら読みました。私もきっと、駆け抜けたり駆け抜けられたりしながら、今の自分になってきたのでしょうね。淡々としていて…、切なくて、そして興味深い一冊でした。

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