『スイートリトルライズ』という江國香織さんの小説を読みました。結婚して3年目になる夫婦のお話でした。妻と夫、それぞれの視点が入り組むようにして物語が進んで行きます。この夫婦は周囲からは羨ましがられる関係に見えるのですが、妻の思いと夫の思いはそれぞれ微妙に噛み合わず、時だけが流れます。妻は独特の言い回しで夫に不安を投げかけるのですが、夫は自身の思いを上手く言葉に乗せて妻に伝えられません。むしろ、心の中に留めてしまいます。ほんの些細な、本当に瑣末な内容なのですが、これが少しずつ隙間を作ってしまいます。夫は元来、人とコミュニケーションを取るのが苦手な性格だからか、または、些細なことを一々言っていたら大過なく日々を過ごせないからか、言葉を飲み込む術を心得てしまった様です。理由はともあれ、二人は日々のルーティンを繰り返して生活を進めます。そのうち妻が浮気をし、夫も浮気をします。お互いにばれない様に細心の注意を払って。お互いにお互いを唯一のパートナーである、という認識のもとで。
結婚した当初、私たち夫婦の場合は一緒に暮らし始めた当初になりますが、その時はお互いがお互いを気遣い、思いやり、時にはぶつかりと、始まったばかりの新しい数々の時間や空間に戸惑いますよね。でも、時が経つと徐々に「阿吽の呼吸」というのか、お互いの行動がパターン化されていくと思います。すると必然的に度々の言葉での説明や、気持ちの衝突も少なくなります。そうなると生活の中には習慣となった物事が増え、所謂「マンネリ化」した状態を招くのではないでしょうか。「三年目の浮気」とはよく言ったもので、大体、二人の新しい生活が一段落する=習慣化する=マンネリ化するのには、三年間程の月日を要するのかもしれません。
物語の中の夫婦は、お互いに相手にばれないように、慎重に、でもスリルを味わいながら浮気をすることで、夫婦の関係も良好に運べるようになっていきます。夫婦の会話が増えたばかりではなく、これがテンポ良く進み、二人の間も風通しが良くなります。お互いの浮気相手が「新しい風」となり、二人の間の潤滑油となったのかと思われます。
あれはいつだったか、私が成人するかしないか、もしかするとまだ学生だったのか…忘れましが、華香ママが「夫婦は、二人と言う単位は、社会において最も小さな集団」と言っていました。そして、「この集団を持続させることは難しいけれど、持続できることは素晴らしいこと」という様なことも言っていたように思います。お陰様で華香ママと華香パパは今でもラブラブですし、私たち夫婦も結婚4年目に入りましたが仲良く暮らすことができています。二人の間に「阿吽の呼吸」が成立するようになっても、日常がルーティン化して、二人の間に「習慣」が沢山できていったとしても、常に「新しい風」を取り入れて、風通しの良い関係を保っていたいものです。そして私が思うに、お互いがお互いを唯一のパートナーであると思っている間は、「新しい風」は他の異性であってはならないと、他の異性で有り得ないと信じたいです。その為には二人が、お互いの心地よい関係の中にあっても、常に向上心を失わず自分を磨き、そして高めていくことが大切なのかもしれません。在り来たりな字面ですが、これは相当にハードなことだと思います。でも、できるだけそうでありたいと願います。ですから、先ずは、いつでもどんなときでも、新しいことに柔軟で、そしてこれをしなやかに受け入れられる自分でいたいと思います。
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