2007/08/22

もしも

日常のフッとした瞬間に「違う世界」に行ってしまう。そして数日間、そこで生活をする。そこで見る風景、関わる人が徐々に「現実」と思えるようになり、本来、自分が生きている世界が急にリアリティを欠いたものとなってしまう。そして、またフッとした瞬間にもとの「現実」に舞い戻る。このフッとした瞬間は不意に襲って来て、自分でコントロールすることはできない。そして、これは人生の中で複数回起こり、行く「違う世界」は毎回同じ所。

もしも、自分にこういうことが起こったら…と想像すると、ワクワクする一方、少し怖いような…気がします。

主人公は人生のフッとした瞬間に、突然に「違う世界」に迷い込み、小さな女の子に出会います。その主人公は、知らない場所に来てしまい、当然のことながら路頭に迷い、郷愁を感じ、本来の世界の恋人たちを思う気持ちを募らせるのです。ところが、小さな女の子に「現実を受け止めなくてはダメ」といった内容のことを淡々と言われます。実際、その小さな女の子は、「そこにあるもの」を「そこにあるもの」として、つまり現実をありのまま受け止めて生きています。その子は一見したところ、全く子供らしさに欠ける、大人びたクールな性格なのです。この小説には主人公がフッと訪れてしまう不思議な世界について、当の主人公がどのように感じていたか、という主観は一切書かれていません。

もしも、私が主人公で、急に別世界に迷い込んでしまったら…。日常の中でのややこしい人間関係や瑣末なことに巻き込まれて自分を見失っていることや、先入観やら主観が先に立って「そこにあるもの」を「そこにあるもの」として見る事ができなくなっていることに気付くのではないか、と思いました。

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