「フェミナ賞」を受賞した処女作、『409ラドクリフ』が初めて収録されたという一冊です。読みたくてしかたがなかったのですが、やっと手にすることが出来ました。
江國香織氏の作品は数多く読んできましたし、これらは処女作に比べ、完成度的には遥かに高いものと思います。しかし今回読んだ『409ラドクリフ』、衝撃でした。何故なら、私が彼女の小説に惹かれて止まない理由がわかったように思ったからです。
彼女の小説の中に出てくる人々は皆、それぞれに魅力的です。自分の心の赴くままに生きる人…、相手に身を委ねて生きる人…、状況に自分を合わせて生きる人…。私が今までに読んできた江國香織氏の作品では、このような登場人物たちが、切り取られた日常の繰り返しの中にいて、それぞれの葛藤をじんわりと繰り返し、そしていつのまにか新しい展望への細い光りを見つけそうになっている、そんな感じなのです。小説の中の人たちが一体、どんな葛藤を抱いていて、何に悩んでいて、そして最後にはどうやってそれらを乗り越えて行くのか、これを江國香織氏は決して明文化してくれません。だから、話は突然に始まり、淡々と進み、下巻があるのかと錯覚させて終ります。
『409ラドクリフ』、勿論、江國香織氏らしい小説でした。でも、他のものとは違いました。それは処女作、ということに関係しているのでしょうか。非常にプリミティヴでピュアな感じ、と言ったら良いのでしょうか。ますます江國香織ワールドに惹かれる予感がしています。
2 件のコメント:
この方の図書を紹介してもらってよかったです。これも見つけて読んでみたいです。
>めがねうさぎさん
なかなかオススメです。江國香織さんの妹さんが、江國香織さんについて書いた文章が載っていて、これも面白かったです!内容を書きたいくらいだけど…、やめときますね。
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