松 山市内を散策、『
くるりん』と称する観覧車で空からも松山の街を楽しんだ後、市電に乗って一路『道後温泉本館』へ。『道後温泉本館』は明治27年に建てられた歴 史ある建物で、温泉は日本三古湯の一つと言われています。夏目漱石の『坊ちゃん』に登場したりと周知の通り、とても有名な観光地でもあります。また、最 近では『千と千尋の神隠し』に出てくる湯屋のモデルとなったとも言われています。私は『千と千尋の神隠し』は大好きで、劇場に3回も通いましたが、あの湯 屋の面影を湛える『道後温泉本館』、この建築物もまた大好きな場所の一つです。
『道 後温泉本館』は三階建ての建物です。ここには現在も利用されているお風呂が男女それぞれ二つずつ、『神の湯』と『霊の湯』があります。そして、使われていない お風呂『又神殿』があります。現在も活躍しているお風呂の一つは、一階にある『神の湯』で、大衆浴場の様子を呈しており、通常想像するところの温泉で す(割り増し料金を払うと休憩所も利用できますが)。もう一つの現役のお風呂は二階の『霊の湯』で、料金は割高ですが入浴後に休憩する部屋があり、お茶と 『坊ちゃんだんご』を頂けます。これの他に、三階にも個室の休憩の間が用意されています。ここを利用したい場合は更に料金が上がるのですが、『霊 の湯』に浸かる入浴券と、『又神殿』という、かつて大正天皇と昭和天皇がお使いになった、そして現在は使われていないお風呂の見学がセットになっています。もちろん、お 茶と『坊ちゃん団子』も出て、個室にてほっこりしながら味わうことができます。今回、我々は張り込んで三階を利用する入浴券を求めて、『道後温泉本館』を 満喫させてもらいました。
『道 後温泉本館』の中は流石に明治の建築を思わせる年代物で、歩く度に軋む廊下は艶々と光り、歴史を感じさせるには充分でした。外観の素晴らしさもさることな がら、館内の間取りの複雑怪奇さも素晴らしいもので…一体全体どうなっているのやら…まるで迷路の様でした。ですが、もちろん、この建物の内部の構造は私 の好みでもあり、今回の『道後温泉本館』訪問で満足した中の一つに、勿論、カウントされています。
さて入浴券を購入し、一路、我々の個室を 目指すと、行く手に難関が二つ。三階の我々の個室に着くまでには、当然のことながら2つの階段を登るわけですが、これがスゴイ!先ず、一階から二階へは右 上の階段を、そして二階から三階へは突然狭く急になった階段(左)を登ることに!登りはなんとかなりましたが、お風呂に入る為に二階に降りる時は壁に手をつたわせながら、ゆっくり 一歩ずつ、文字通り「恐々」でした。
さて、『霊の湯』はお湯加減もほど良く、さらに女湯は私が入った時にはなんと!貸切状態!でした!丁度、お客さんとお客さんの合間に入った様で、本当にゆっくりと浸かる ことができました。お湯は少しぬるっとした質感の透明なもので、とても気持ちが良かったです。一方、ham君が入った男湯の方は女湯とは対照的に賑わって いた様でした。ham君には申し訳ないですが、私はラッキーでした。お風呂から上がった後は再度、恐怖の階段を登って個室へ。お茶と『坊ちゃん団子』を 持ってきてもらい、おやつタイムとなりました。お風呂上りの『坊ちゃん団子』、美味しかったです。個室の料金を明かすと大人一人1500円也。ですが、浴 衣に着替えてお風呂に入りに行けること、ドライヤーや鏡など、他者に遠慮なく使えることなど、おやつ以外にも特典!?は多く、オススメかと思います。
さ て、のんびりした後には『坊ちゃんの間』と『又神殿』を見学しました。『坊ちゃんの間』は夏目漱石の人となりについての展示がなされていました。松山市内 を走る『坊ちゃん列車』や『坊ちゃんの間』、松山市内にいると、ついつい頭に『坊ちゃん』の情景を浮かべてしまうことが少なくありません。
『坊 ちゃんの間』を一通り観終わった後、『又神殿』へと向かいガイドの方の説明を受けながら見学をしました。流石に皇族の方々が使用された部屋、非常に煌びやかな荘厳な趣のもので、調度品の一つ一つに思わず溜息を漏らしながら見入ってしまいました。その中でも際立っていたのはお手洗い。一階も 使用されたことはないそうですが、床は畳敷きで、便器は漆塗り、驚きを隠せませんでした。ガイドの方が、「この建物自体が重要文化財ですから…」と仰って いましたが、このような貴重な文化財を大切にしていきたいものだと感じると共に、自分が温泉に入るのに払うお金が、これを守る為に役立てられるのならば一 石二鳥と思いました。
長々と、しかも充分に『道後温泉本館』での時間を楽しんで、ふと窓の外をみると既に夜の帳が折り始めていました。そろそろ個室の使用時間も限界に達していましたし、荷物をまとめて再び市電の駅へと帰路を急ぎました。また機会があれば是非、来たい場所の一つです。
個室からの風景
夕闇の中の『道後温泉本館』の外観は、まるで『千と千尋の神隠し』の世界。