両親と4人の子供の6人家族の日常を、3番目の娘の視点で描いた小説でした。彼女の日々の暮らしと、家族の日常、そしてその家族が今まで作り上げてきた歴史を、江國香織さん独特の、透明感のある文章で淡々と書き綴られています。それは、何となく読み始めて、つのまにかのめり込む様にその世界に浸ってしまう、といった感じの一冊でした。ある家族の日常のほんの一部を切り取って本にした、といった内容でしたが、そこからは、それぞれの家族には歴史があり、その家族独特の習慣ややり方があるということが、まざまざと書かれているように思いました。また、外野からは一見波風立たぬ幸せそうな家族と映っていても、実は色々な問題や困難を内包しているのだということも、ひとつのテーマだったのではないかと感じました。
こちらは恋愛小説でした。とは言うものの、華やかな楽しい恋愛ではなく、絵を描くことを生業とする主人公と妻子ある男性との不倫を書いた、切ない切ない物語でした。男性の持つ家族を壊すことを望まないと”思い”、決して男性の訪れを待っているのだとは”思わず”、自分は軽やかに自分の人生を自分自身で歩んでいると”思い込んで”日々を暮らす女性。しかし、本当のところは恋愛にドップリと浸かっており、男性との時間を中心に生活をしている様が、悲しいくらい如実に現れていていました。この物語は不倫の恋愛について描かれていましたが、主人公の女性は、自分の人生と恋愛の狭間で悩む女性の典型とも言えるのではないでしょうか。自分の思い描く人生と恋愛とは、切り離しては考えることができない、と改めて感じた一冊。両者が絡み合って、どのように昇華していくのか、私にはまだわかりません。
0 件のコメント:
コメントを投稿