『Benny & Joon』1993年 99分 (邦訳『妹の恋人』) 、先日、GyaOで観た映画です。せっかくなので感想を書き記そうと思います。先ず、何故この映画が目に留まったのか。それはJohnney Deppが出ているというのもありましたが、GyaOの映画紹介欄に”自閉症の妹を見守る兄”という説明書きがあった為です。私は大学院の学生の頃から自閉症には興味を持っていましたから、一度観ようと思ったのです。
この映画は、”精神的に不安定”な妹と、その妹の面倒を見る兄の日常生活を描いています。両親を幼い頃に失い、残された家族はお互いのみ。兄は自動車修理を職業とし、妹との生活を支えます。妹は絵画において類まれな才能を持ち合わせているものの、身辺自立及び社会参加の面では援助を要します。この為、兄は家政婦を雇いますが、妹と上手くいかず過去に何人も辞めていく状態。妹の主治医はグループホームへの入居を勧めますが、どうしてもこれを承諾できない兄。そんな折、Johnney Depp扮する、これまた少々個性的な青年と妹が出会い、恋に落ちていく…というもの。
ストーリー自体は綺麗にまとまった作品だったと思います。ただ、やはり私の中の関心事といえば、”自閉症”という視点に集中しました。
そこで、妹についての記述。私は無難なところで”精神的に不安定”というものを選びますが、インターネット上では、実に様々な表記がされています。一部を紹介しますと、海外のものでは”his unbalanced sister”や、”mentally unbalanced Joon”といったもの、日本のHPでは”神経を病み、周囲とうまくコミュニケートできない妹”、また”自閉症のジューン”や”自閉症気味の妹ジューン”、それに”精神病を患う妹ジューン”といったものまで登場しました。GyaOの説明でも”自閉症の妹を見守る兄”とあったのは、先にも記した通りです。私の感想では、”his unbalanced sister”または、”mentally unbalanced Joon”という表記に留め、自閉症というのはあまり前面に出さない方が良いのではないかと思いました。”自閉症”と言い切ってしまうには、もう少し人物の設定、または描写に無理があるように感じたからです。また、Johnney Depp扮する青年についても、彼の他者とのコミュニケーションのとり方も一風独特というところで、色々と考察を加えることが出来そうです。
今でこそ、自閉症の研究分野が飛躍的に進歩し、この様な指摘も可能になってきました。しかし、この映画が上映されたのは1993年のことで、日本では漸くLD(学習障害)という言葉が聴かれるようになった頃でした。そう思えば、やはり米国の発達障害に関する研究の先進的な様子は一目瞭然。映画の中でもグループホームをめぐる話題が出てきますが、まるで現在の日本の状況を描いたような内容だと見て取れ、日本の本分野の現状が見えてくると共に、まだまだ手を尽くす領域があることが覗えます。
最近、記憶に新しいところで、フジテレビが放映した『僕の歩く道』という、自閉症の青年が主人公のドラマがありましたが、これがまさに『Benny & Joon』 と同様に自閉症(『Benny & Joon』 の場合、自閉症と思しき)の人々の青年期を主題とした物語だったと思います。1993年の『Benny & Joon』、2006年の『僕の歩く道』、漸く日本でも青年期に視点が向けられる時代に入ったということでしょうか。
私はこの様に感じつつ、この映画を観ました。
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