2008/07/11

アンカー展 6月20日(金)

時は少々遡って、6月20日(金)の出来事。だいぶ以前より気になっていた『アンカー展』に足を運びました。会期はまだまだある…とのんびり構えていたのですが、気が付くと既に最終週になっており、慌てふためいて予定を組んだのでした。

平日の朝一番での入場を予定して行きましたから、空いていることを予測していたのですが、甘かった!会場は入り口から出口まで、まさに数珠繋ぎの大賑わいの様相を呈していました。一瞬、怯みましたが、とても楽しみにしていた展覧会でしたから、気を取り直して入場しました。

アルベルト・アンカーの作品は、本当に素晴らしく、又、美しかったです。日本ではあまり知られていないアンカー氏ですが、スイスでは19世紀に活躍した国民的画家の1人です。写真かとハッとさせられるような緻密な作品は、堅実だったアンカー氏の人生を表したような、いや、質実剛健なスイス人気質をまさに”絵に描いたような”印象を受け、懐かしささえ感じました。

アルベルト・アンカーの作品は、人々の飾らぬ日々の生活を、まるでその場を切り取ったかのように淡々と書き続けた、そのようなものが殆どですが、中には教育を意識したものも何枚かあります。アンカー氏は、ペスタロッチなどの教育者の思想に非常に共感的で、これを世間に絵を通して伝えるというような意識もあったようです。ですから、教育をテーマとした作品もいくつか見受けることができました。それらの絵では、子供達が目を輝かせて活き活きと描かれており、私の二人の大切な妹達がスイスの幼稚園、学校にそれは楽しそうに通っていた日々と重なる感覚を覚えました。

右の写真は自身のお土産に買ったマグネットです。題名は『筆記版と縫物かごを持つ小学生』。この絵を見たとき、フッと親近感が心に沸き、絵の前を通り過ぎるのにひとしきり時間を要しました。展覧会の会場では気が付きませんでしたが、今思うと、私達がスイスに住んでいた頃、現地の小学校に通っていた私の真ん中の妹の姿になんとなく雰囲気が似通っている、そんな気がします。時代背景が異なる為、着ている洋服や持っている物、もちろん人物だって全く異なるのですが…。Zurichの町並みがずっと変わらずにあるように、スイスには時代を超えて受け継がれている普遍的なものがあるように思います。

この展覧会にはZurichのKunsthaus(美術館)からやって来た絵も何点か展示されていました。かつて私が家族と共にKreuzstrasseに住んでいた時、Kunsthausに足を運んで観た絵に今回、再び出会ったことになります。鑑賞中は、20年近い時間を過去から現在、現在から過去と行き来する、時空を超えた思考の中に埋没し、とても不思議な、まるでタイムマシンにでも乗ってしまったかのような、そんなひと時を過ごしました。すでに会期の終わったこの展覧会で感じたこと、又、考えたこと、これらを未だ自身の中で租借できていない、そんな日々を過ごしています。

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