2007/02/10

読書

今年に入って、4冊の本を読みました。川上弘美さんの短編小説「ざらざら」と「ハヅキさんのこと」、、内田康夫さんの「風の盆幻想」、小川洋子さんの「博士の愛した数式」の4冊です。「風の盆幻想」と「博士の愛した数式」は、夫のham君が図書館から借りて来たり、購入したもので、自宅においてあったので読んでみました。我々夫婦は二人とも本が好きで、本を購入する際には確認をしておかないと、同じ本が自宅に2冊…ということにもなり兼ねません。

さて、今回読んだ4冊。

川上弘美さんの「ざらざら」「ハヅキさんのこと」の中のに収録されていた短編小説は、子供の頃のこと、自分の育った家族のこと、恋愛のこと、どれもかつて感じた感情を懐かしく思い起こさせる様な内容でした。「あ、そんな気持ちになったこともある」とかつて経験した感情をトレースしながら、懐かしみながら読み進めました。短編だったことは、通勤電車で読むにはとっても適していました。

内田康夫さんの推理小説「風の盆幻想」は、テレビのサスペンスでもよく上映している「浅見光彦シリーズ」の一つです。今回は浅見さん登場まで、前置きが長く少し読みつかれた感もありましたが、奇想天外な人間関係から犯人探しをするのは十分に楽しめました。最後「この人はどうだったのか…」という謎を残すことも忘れずにあり、想像を膨らます楽しみも「ああ、もっと知りたい」という要求?不全感(笑)も十分でした。

小川洋子さんの「博士の愛した数式」。これは4冊の中で一番良かったです。通勤電車で読んでいて、最寄の駅が近付いても降りたくなくなるくらい、先が気に掛かる小説でした。不慮の事故で後天的に記憶障害(過去の記憶は持っていられるけれども、新しく短期蓄積されない)を持った「博士」人物の描写は素晴らしいものがありました。障害名を聞かずとも、概ね障害像を想像できる記述には脱帽でした。決して記載されている量はは多くないのですが、障害を持って生きる「博士」自身の苦悩、不安を描いた箇所は、読んでいて「博士」像を作るには十分でした。「博士」は障害を持って日常生活をなんとかスムースに過ごす為、物事を直ぐに忘れても、メモを見て思い出せる様にする等、自助的な対応方法を自身で編み出していましたし、周囲の者も、自然に精神面での配慮をし、物理的な支援方法も経験則の中ではあるものの、的確ものを見出していました。「博士」を支援するものが、雇われた家政婦であったことも、大きなポイントだったと思います。家政婦は友愛の情、若しくはこれよりも少し深い情を抱きつつ、「博士」を一人の人間として尊重し接していました。これが、障害を持つ「博士」を安心して身を委ねる、安全な場所として機能したのだと思います。これは他人だからできたのでしょう。「博士」自身の家族といえば、一歩外から「博士」を愛情を持って見守るスタンスだったと思います。「博士」の家族は小説の中では偏屈な女性として描かれていましたが、決して「博士」を見捨てたといった冷淡さは無く、むしろ愛情があるからこそ一歩離れていたのではないかと思われました。例えば実際に家族に障害を持つものが存在するといった状況でも、私は第三者が障害を持つ家族の介護に従事し、家族は一歩離れて接するといったスタンスの方が、功を奏する場合も多いのではと思っています。むしろ、お互いに尊重し合い、愛情を持って関われる秘訣ではないのかと思うのです。色々と考えた小説でした。

この「博士の愛した数式」、一昨日に読み終わりました。次は何を読もうか、ham君の本棚を物色しようか、それとも図書館に行こうかな…。

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